ビジネスをしているとたまに出てくる言葉「できかねます」。
この言葉は「婉曲的に出来ないことを伝える」表現だという事ですが、正直私には違和感しかありません。
日本語は自由なものだと思いますが、なぜこのような違和感を持つのか、自分なりに考えてみました。
書いてること
ネットで調べた「できかねます」の意味・使い方
まず、世間様で「できかねます」という言葉がどんな物として扱われているか、その詳細を調べてみました。
婉曲的な拒否を表す
「できかねます」という言葉には、拒否したい案件に対して、婉曲的に断りたい気持ちを表現するものなのだそうです。
「かねる」という言葉が、「躊躇」や「困惑」という雰囲気を醸し出し、「出来ません」という「不可能」ではなく、「出来なさそうな雰囲気」をいい感じで表現してくれるのだとか。
これは、直接的にはNOとは言えないビジネスシーンではとても使える表現ですね!
いたしかねます、とは違うニュアンスがあるらしい
現在、「できかねます」という言葉と、ほぼ同じようなシーンで使われている言葉「いたしかねます」。
この二つにはニュアンス的な違いがあるのだとか。
「できかねます」は、頑張っても出来ない。無理なものは無理、という時の、拒否に使う。
「いたしかねます」は、なんかしら事情があって、やりたくないときの、拒否、なのだそうです。
つまり、「できかねます」の方が、NOな感じが強め、という事になりますね!
漢字とひらがなでも違うらしい
「できかねます」と「出来かねます」では、用法が違うそうです。
もうちょっと言うと、「出来かねます」は間違いなのだとか!
「出来かねます」と書いてしまうと、「出来」という表記は名詞としての表現になってしまうので、誤りだという事でした。
へぇ、そういった違いがあるんですね!
ネットの「できかねます」の正しい使い方を調べた感想
などと、「できかねます」という言葉を調べていろんなサイトを渡り歩いてみました。
辞書サイトから始まり、ビジネスマナーを掲載したキュレーションサイト、求人サイト、転職サイト、etc。
どれも一様に
- 「できかねます」の正しい使い方は?
- 「できかねます」と「いたしかねます」の違いは?
などと、まるで判を押したような記事ばかりでした。
正直な感想を言いましょう。
こいつら、頭大丈夫か。
これは、「ほぼほぼ」に遭遇した時以来の衝撃ですよ、こんな間抜けな誤用。
漢字かどうかで意味変わるわけね―じゃんバカジャネーノ
っと、
そもそも流動的な「言語」というものに対して、正しい正しくないの議論はそれこそナンセンスでしたね。
私の心の声は置いておきましょう。
ここまで私の考えが否定されきってしまった後で、あえて私が気になる(納得がいかない?)のは
「なぜ誤用が使われ続けているのか」
「なぜまことしやかに「正しい用法」などが語られるのか」
という事です。
もしかしたらどこかに私の知らない、「できかねます」の用法があり、それに照らせば、何ら間違っていない、かもしれません。
違和感にちょっと吐き気をもよおしますが、めげずに思考を進めていきましょう!
私が考える「できかねます」の意味
私個人としては、「できかねます」は違和感しかないのですが、果たしてそうでしょうか。
もしかしたら「できかねます」という表現でも、私の頭の中で納得できる用法や、意味合いがあるかもしれません。
もう少しいろんな角度で考えてみましょう。
できちゃうとマズいっしょ?
超有名で大手企業のサイト(●ggi、マイ●ビ、Tech●cademyなどなど)に書いてある関連記事を参考にしながら考えてみました。
「できかねます」
とは、
「出来る状態になってしまうと、困ります(ので、拒否したい)」
という事なのではないでしょうか!?
もうちょっとフランクな表現をすると
「コレ、出来ちゃうとマズいっしょ?」
って感じ?
(Exitが言ってるイメージでお願いします)
だって「出来る」と否定すること自体が変なんですもん。
「出来る」を否定して、拒否を表すとなると、↑のような感じにしかなりませんよね。。
純粋な動詞ではないことに違和感
そもそも「できる」って表現が非常にあやふやな「動詞」なんですよ。
「できかねます」という用法で考えれば、語幹の「できる」は「可能」の意味でとらえてよいかと思います。
この「できる(という状態を表す、形容詞的な動詞)」が「出来ない」というシーンが、さっぱいイメージできません。
前述のようなニュアンスは置いといて、出来ない条件なのか、不可能なのか、その原因はいいとして、
「できる(かもしれないこと)が、出来ません」って、やっぱり変じゃないですか?
超大手さんも「~かねる」は「不可能」を表す表現、って明言してるんですよ。
それなのに、「でき~」と重複することには、何ら疑問を持っていないご様子。
何か、まるで外国人と話してる気すらしてきて、頭の頭痛が痛くなっちゃいますね(わざと)。
「できかねます」という言葉を分解して考えよう!
私の頭の中の情報だけではこれ以上考えていくのが厳しそうだったので、Wiktionaryをはじめ、色んな辞書サイトで、「できかねます」の言葉の成り立ちを考えてみました。
基本は「できる」「かねる」
「できかねます」を言葉のパーツとして分解すると、「でき~(できる)」「~かねる」になります。
これは、参考にした大手サイトさんでも同様でした。
(私の考えと全く違うのに、ココは合ってる不思議)
「できる」も「かねる」も調べてみると、実は色んな意味合いがあるようでした。
「できかねます」の使われるシーンから、それぞれ以下のような意味だと推定します
できる、は可能不可能を表わす動詞
「できる」には様々な用法がありますが、ここでは「出来るか出来ないか」、つまり可能不可能を表す意味であると考えられます。
「出来る」は動詞ではなく、もっと違うもの(助詞、助動詞みたいな、補助的なもの)だと思っていたのですが、普通に動詞なのですね。
前述しましたが、可能を表す「出来る」は、「する」「話す」などとは違い、「能力や権限を持つ状態」を表す言葉です。
私の中では、この中途半端な動詞が、「~かねる」の用法になっているのがどうしても気持ち悪く、違和感が残ったままです。
なお、他の「出来る」の用法はありましたが、ビジネスシーンにはそぐわないものでした。
(デキ婚の「出来る」、カップル成立の「デキる」など)
かねる、は不可能を伝える助動詞
「かねる」にも複数の用法がありましたが、その中でも「出来ない・不可能を表す」という意味でよいかと。
調べてみると、
「過ちを犯しかねない(歓迎しない可能性の表現)」
「見るに見かねて(したくない。躊躇)」
も、同じ言葉なんですね。
全く用法が違いますし、意味合いも全く違うので、なんか混乱しそうですね。。
それぞれの言葉を分解して考えてもやはり、「でき+できません」という表現には違和感しかありません。。
違和感の正体は、英語に直すととても分かりやすかった!
「出来かねます」
これって、英語にするとどうなるんでしょう?
まず、「出来る」は、可能を表す動詞です。
英語は得意な方ではないですが、たぶんpossibleとか、avairableとかが近いのではないでしょうか。
canもありますね。
(canは単独の動詞では使わないので、「~かねる」の用法に近いかと)
「~かねる」は、不可能を表す言葉でした。
can’tとか、もっとニュアンス的には、be afraid of ~ notみたいな感じですかね。
これらをつなげた「できかねます」、を無理やり英語にすると
I can’t be avairable~
みたいな感じになってしまいます。
「出来る」に対応する言葉が形容詞なので(できるが形容詞的なので)、やっぱり言葉としてバリバリ違和感がありますね!
※ちなみに英語圏ではそもそも文化、コミュニケーションが違うので、できかねます、的な婉曲表現を使うのかどうかは分かりません。
ビジネスシーンで「できかねます」は使えるか?
私のできうる限り「できかねる」という言葉について様々な可能性を検証してみました。
この言葉はビジネスシーンでよく用いられる言葉ですが、実際に使えるのか、使うべきなのか、という、運用方法についても考えてみました。
そもそも「出来る」という事を言うべきではない
私もそんなに豊富な経験をしているとは言えませんが。。
ビジネスシーンで「できる」という言葉自体を、用いるべきではない気がします。
「できかねる」という用法でも、それは同じことです。
「できる」という言葉は可能を表す言葉ですが、「可能」とは言い換えれば未確定要素を含んでいるようにも思われます。
「ツユダクできますか?」
「出来ますよ」
みたいな軽いノリならまだしも、出来るかどうか、というボーダーライン上の話題を、商談に持ち出すべきではない気がします。
サービスとして取り扱っているのであれば「ある」、取り扱いがないのであれば「ない」。
「できる」「出来ない」という表現を、をビジネスのやり取りに引き出しているのが、そもそも場違いな気がします。
出来ない理由やニュアンスを表現するべきじゃない
「できかねる」は「いたしかねる」とは違って、物理的・客観的に無理である、というニュアンスを含むとされている、と触れました。
私は思います。
そもそも、ビジネスパートナーに、そんな裏事情をバラシていいもんか。
BtoBの商談相手でも、BtoCのカスタマーサポートであっても、なぜ出来ないのか、何が理由なのかを相手に教える筋合いはありません。
(相手は知りたがるでしょうが、それを開示する正当な理由はない)
ちょっと体育会系なノリで行くなら
「出来る出来ないじゃない、Yesかハイだ!」
ってなるでしょうし、
意識高い系なら
「そこまで正直に開示する必要はないよ」
ってなるでしょうね。
「できかねる」が持つとされる「マジ無理っす」のニュアンスを表現するのは、少なくともビジネスシーンでは需要はなさそうです。
「いたしかねる」ではダメな理由が見つからない
「できかねる」をしきりに使用する人にお聞きしたいですが、
「いたしかねる」じゃあ、何でダメなんですかね??
そもそも思うわけですよ。
なんで「いたしかねる」じゃあ、ないのかと。
日本語的にもスマートで美しい「いたしかねる」ではなく、
「で、できでき、できません!」
みたいな「できかねる」を使いたがるのか。
そもそもの話をこのタイミングでいうのも変ですが、理解できません(笑)
そもそも、毅然とした態度で断る言葉ですよ!
最後の最後でとんでもないことを言います。
「できかねます」にせよ、「いたしかねます」にせよ、これらは「毅然とした態度でお断りするときに使う、かなり強い言葉」であるはずです。
なので、基本はどちらとも「使うケースは限られている」と思うわけですよ。
例えば、
- 利益度外視で、5万円の製品を1,000円にまけろと言われた
- 誠意を見せるために、大通りで裸踊りを毎日しろと言われた
- あのバイトムカつくから、上司のお前がクビにしろ、と言われた
この位のことがあって初めて、「できかねます」も「いたしかねます」も使うくらいなもんじゃないでしょうか。
「お客様は神様だ」と言われて久しく、顧客側の横暴なふるまいが目に余る昨今。
全ての顧客に迎合し、受け入れろとは言いません。
無理なものは無理、と毅然とした態度でお断りすることは、大事なことだと思います。
しかし、最終兵器である「できかねます」を使う前に、お客様に対して懇切丁寧に説明し、開示可能な範囲で誠意をもって説明することは、忘れちゃいけないと思います。
まとめ、「できかねます」はこう使え!
こう使え、というより、なるべく使わないどこ!というのが私の結論ですね!
無理難題を言われそうな時、お金に関わるとき、社会通念に反するときなど、ここぞとばかりに使うようにしましょう。
なお、重ねて言いますが
「できかねます」
という言葉は、誤用であるという意見が確実に発生している用法です。
あなたがまともな危機回避能力をお持ちなのであれば、
誤用と判断される可能性を含む「できかねます」と、
日本語としても美しい「いたしかねます」、
どちらを選ぶのがリスクヘッジとしては正しい選択でしょうか。